相続登記を自分でする④(相続登記の申請書作成から完了まで)

相続登記をご自分でするための方に、実務のノウハウを記事にしました。免責事項についてはコチラ

相続登記申請書の作成

いよいよ、相続登記の申請書の作成になります。といっても相続登記の申請書については、そんなに難しくなく作成できると思います。相続登記の申請で大変なのが収集する書類が多いのと、収集した書類の確認すべきところが多いところが大変な作業になるので、申請書作成自体は他の登記申請と変わりがありません。A4で作成し文字は横書きとするなど細かいルールはありますので、法務局HPにも申請書の雛型がりますので参考にしてください。

相続登記申請書の記載事項

申請書の記載事項は以下の通りですが、1~7までは1ページ目とし、9の不動産の表示については2ページ目に作成、3ページ目は印紙を貼る台紙にしており、一般的に紙申請の場合は、相続登記の申請書は3ページにまたがっています。各ページについては申請書の相続人の氏名欄に押印する印鑑と同一の印鑑で割印をしてください。相続する不動産が沢山ある場合は2ページ目の不動産の表示を複数毎にまたがって記載しても結構です。(下記の資料は1ページに不動産の表示まで記載しています)

  1. 登記の目的
  2. 原因
  3. 相続人
  4. 添付書類面
  5. 申請日と管轄法務局
  6. 課税価格
  7. 登録免許税
  8. 不動産の表示
相続登記申請書

登記の目的から不動産の表示までを一枚の申請書にした見本。

印紙台紙

印紙台紙。貼付した印紙に消印は不要です。

割印

申請書の割印の見本

 

登記の目的

不動産の所有権全部の場合の登記の目的は、「所有権移転」と記載し。持分だけの場合は、「○○持分全部移転」と記載します。※○○は被相続人の名前になります。また、持分と所有権全部の不動産が混在する相続の場合は、別々の申請書にしたうえ、2件分の相続登記申請を同時に申請するか、または、「所有権移転および○○持分全部移転」など一括で申請することも可能です。ただし、分けて申請するほうが分かりやすいので、2件で申請するようにしてください。また、細かい注意点ですが、登記申請書の上部は空欄を作る必要があり、目的は空欄を作成した後に記載します。

原因

被相続人の亡くなった日を掲げて、「令和〇年〇月〇日相続」と記載します。数次相続などが発生している場合、2件の相続手続きを1件でまとめて申請する方法もありますが、基本的には別々で申請し、上記のように記載すると問題が少ないです。

相続人

遺産分割協議で相続した不動産を取得した人、または、法定相続で相続する場合は人数分を記載する必要があります。複数人の相続人が取得する場合や、相続した不動産自体が持分だけになる場合は、持分割合を明確にする必要があるので住所と氏名の間に持分〇分の〇と記載する必要があります。

相続人(被相続人○○○)
住所
(場合により持分〇分の〇)
氏名         ㊞
※この印鑑はお認印で結構です。

添付書面

相続登記の申請書に添付する書類の一覧を記載します。概括記載で結構ですので、一般的には、「登記原因証明情報」「住所証明書」になります。登記原因証明情報の中に、被相続人の戸籍一式、住民票の除票、遺産分割協議書、相続関係説明図、相続人の戸籍謄本と印鑑証明書が含まれます。住所証明書は、相続した不動産を取得する方の住民票になります。名寄帳は法定添付書面ではないので、添付書面欄に記載しないことがルールです。

申請日と管轄法務局

申請日に関しては特に注意点はないですが、郵送申請をする場合には到着するであろう日付を記載するか発送日を記載するか悩むところです。どちらでも問題ないと思います。(弊所では相続登記のほとんどをオンライン申請により行うので申請日は送信日になります)重要なのは管轄法務局で堺の不動産の登記申請をするのに、大阪法務局堺支局以外の管轄に申請すると問答無用で登記却下事由に該当しますので管轄は重要になります。また、管轄が間違えて受付されると却下事由ではあるものの、基本的には取下げを求められます。取下げには窓口での対応になりますので、遠方の不動産について郵送申請でする際は、管轄をよく確認して申請する必要があります。

課税価格

名寄帳で確認した相続不動産の評価額の総額を合算して記載する必要があるのですが、この合算した評価額の1000円未満の部分を切り捨てにして記載する必要があります(合算した評価額が1000万0985円の場合1000万円になります)。これも計算するためのルールが決められていて、評価額を合算前に切り捨てするなどは認められません。また、不動産持分を相続した場合は名寄帳に記載されている評価額を持分割合で乗算したうえで計算する必要があります。この計算を間違えると次に説明する登録免許税を多く納税することになり、還付をする手続きが余分に必要になりますので、注意が必要です。

登録免許税

先ほど計算して算出した課税価格に、0.4%を乗算した数字が登録免許税になりますので、1000万円の課税価格であれば、登録免許税は4万円になります。この登録免許税の計算についてもルールが決めれられており、登録免許税として計算した額に100円未満の端数がある場合は切り捨てになります。たとえば計算結果が1万1150円であれば、納める登録免許税は1万1100円となります。また、登録免許税は原則として、金銭での納付ではあるものの収入印紙で納付することが一般的になっていますので、堺の法務局であれば入り口正面の印紙売場で購入が可能です。

不動産の表示

不動産の表示については、遺産分割協議書と同じ記載になりますが、申請書に関しては不動産の全部事項証明書に記載されている不動産番号に換えることも可能です。ただし、数字の組み合わせになりますので、記載誤りがあってもすぐに気づかないこともあり、以下のように所在地番で記載するほうが無難です。

土地の全部事項証明書

土地の全部事項証明書。最上部の赤枠で囲っている所在・地番・地目・地積を確認する。

所在 堺市堺区中安井町三丁(堺は丁です)
地番 4番10
地目 宅地
地籍 100.00㎡

申請後の補正

申請書を作成し、計算した登録免許税の印紙を貼付(印紙には割印をしない)して、申請書の相続人欄に押印、万が一訂正がある場合の捨印、申請書3ページ分に割印をして、添付書面の一式を合綴して申請することになります。合綴する添付書面自体の順序は決められていないので、整理しやすい順序に合綴すればよいのですが、申請書は一番上にくる必要があります。管轄法務局の不動産権利申請の受付係に申請をするのですが、申請後に修正が必要な個所がある場合は、平日に窓口へ行き訂正(補正といいます)をする必要があります。この補正は申請人自らする必要がありますので、相続登記申請前の申請書や添付書類のチェックは慎重に行ってください。

登記の完了

相続登記の審査が無事終了すれば、登記申請時に教えてくれる登記完了予定日以降に、法務局へ返却書類の受け取りに行きます。相続登記が完了すると新たに権利証(現在は登記識別情報という名前に代わっています)が発行されます。なお、登記完了後、3か月を経過しても返却書類を取りに行かない場合は廃棄する扱いになっていますので、登記完了後は早めに法務局へ行くようにしてください。注意点としては登記完了の旨は法務局から連絡がありません。法務局からの連絡は訂正がある時と取下げが必要な時だけと考えてください。

登記完了後に受取る書類

登記完了後に受取る書類は以下のものになります。

  • 登記識別情報通知書
  • 登記完了証
  • 原本還付をお願いした書類

完了した後に受取る書類は重要な書類になりますので、原則、申請人たるご本人しか受取ることができません。また、受取る際には本人確認が必要になりますので、免許証の提示、申請書に押印した印鑑の持参が必要になります。平日に受取ることができない場合や、遠方の法務局へ申請している場合は、申請時にあらかじめ郵送返却の希望を申請書に記載し、返信用封筒を作成して本人限定受取郵便に必要な郵便切手を貼付して申請してください。資格者代理人でないものに登記識別情報を郵送により返却する場合はなりすまし防止のため、本人限定受取郵便の方法で申請書に記載している住所地への郵送返却になります。

登記識別情報通知書について

権利を取得する登記が完了すると登記識別情報通知が発行されます。先ほども触れましたが現在の権利書になります。登記識別情報通知書は登記申請がオンライン申請に対応するようになってから権利書のかわりになるものが必要になり、本人が所有者であることの証となる不動産のパスワードを保有する必要が出てきました。説明が回りくどいですが、要はご本人しか知りえない不動産のパスワードなのですが、あくまでも大切なのは通知書自体ではなく、通知書に記載されている12桁の英数字のランダムな数字になります。そのため、登記識別情報通知書の管理については法務局から発行された袋とじがされた状態で大切に保管していただきたいと思います。袋とじを開けてご自身の不動産のパスワードを常時知っておく必要性がなく、また、開封するとスマホの写メで撮影されてしますと不動産が危険な状態になる可能性があるからです。

登記識別情報通知

登記識別情報見本(見本になりますので、袋とじ部分を剥がしています)

最新の登記情報の確認をする

相続登記の手続きを進めるに際し、取得した不動産の全部事項証明書は古い情報に基づいたものになりますので、相続登記完了後、法務局の乙号申請の窓口(堺の法務局であれば入り口正面の窓口)で全事項証明書を取得し、相続した不動産の登記申請に誤りがないか確認をし、これで終了になります。万が一、住所氏名や漢字の表記など誤りがあるようでしたら登記申請をした窓口に全部事項証明書を持参して、登記申請と異なる登記情報が記録されているとお伝えください。

最後に

間違いのない相続登記をするとなると確認事項が多岐にわたり、かなり苦労することと思います。ただし、申請の取下げをしても手続きが遅くなったとしても、ご自分の相続のことですので、誰からもクレームが入ることもありません。これを読んで、相続登記に取組んでいただき、一つでも放置される相続登記が無くなればと考えています。また、手続が面倒になってきて、途中からでも専門家に任せたいと考えている場合は、一度、弊所をご検討いただければと思います。

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